カラーマネジメント(7):カラースペース

カラースペースとは


カラースペース(色域)とは、可視色域内(Lab領域内)における色再現可能範囲の事です。コンピュータ周辺機器やアプリケーションソフトウエアで扱えるカラースペースには、sRGBやAdobeRGB、CMYK等があります。
デジタルカメラやスキャナのオリジナルのカラースペースは可視領域より広いのですが、そのままでは他のコンピュータ機器で扱えないため、カラースペースをsRGBやAdobeRGBに変換して画像データを書き出しています。

sRGBは、コンピュータや周辺機器が扱うことができる標準カラースペースで、WindowsやMacOS等のOSレベルでサポートされている標準色域です。
入力機器では、デジタルカメラやスキャナがsRGB色域のデータを書き出すことができます。出力機器では、モニタやインクジェットプリンタでsRGB色域の表示や印刷ができます。また、ワープロや表計算などの一般のアプリケーションソフトは、sRGB領域で画像を扱います。
sRGBは、一般ユーザがカラーマネージメントを気にせずに、様々なコンピュータ周辺機器を使って気軽にデジタルフォトを楽しむためのカラースペースとも言えます。

AdobeRGBの色域はsRGBより緑側が広く、CMYKの色再現可能領域もカバーします。これは、DTP(デスクトップパブリッシング)で利用される商業用CMYK印刷の色域をカバーするためのものです。
入力機器では、高機能デジタルカメラや高機能スキャナがこのAdobeRGB色域のデータを書き出すことができます。出力機器では、ハイエンドの一部モニタでこの色域の表示ができますが、まだ高額で一般的ではありません。プリンタでは、キヤノンインクジェットプリンタで、プロフェッショナルフォトペーパやスーパーフォトペーパーを利用してアプリケーションカラーマネージメントで印刷すると、AdobeRGBの色域の大部分を再現できます。アプリケーションソフトは、Adobe PhotoshopなどのAdobeRGBが扱えるソフトウエアが必要です。
AdobeRGBを扱うには、カラーマネージメントの知識が欠かせませんが、デジタルフォトの色彩を極めたい方や商業印刷向けのカラースペースとも言えます。

また、画像データには、「どのカラースペースで作られたのか」という素性を示す事ができるように、sRGBやAdobeRGBなどの情報をタグ(カラープロファイル)としてICCプロファイルを埋め込む事ができます。
カラープロファイルの埋め込まれた画像は、それに合わせたカラースペースで編集や印刷を行う事が望まれます。このため、Adobe Photoshopでは[カラー設定]画面で、画像の編集や印刷を行う作業用スペースをsRGBやAdobeRGBなど各種カラースペースに切り替えられるようになっています。


では、次にsRGBやAdobeRGBの解説をしていきます。


sRGB

コンピュータ周辺機器やアプリケーションソフトウエアが扱える標準的カラースペースのsRGBは、「気軽にデジタルフォトを楽しみたい」一般ユーザには最もお勧めです。
sRGBは、難解なカラーマネージメントを気にすることなく、デジタルカメラやスキャナ、OSやプリンタドライバまでもが標準サポートしているだけでなく、利用するソフトウエアもPhotoshopに限定せずに自由に選べます。特に一般のモニタ画面が表示できる範囲は、ほぼsRGBに等しいカラースペースです。

キヤノンインクジェットプリンタの [ ドライバ独自の色処理 ] の場合では、印刷する画像は全て sRGB 色域の画像と見なして印刷します。このため、印刷する画像がsRGB の場合は [ ドライバ独自の色処理 ] を利用するのも良いでしょう。

では、 [ICM や ColorSync] で利用されるインクジェットプリンタのデバイス ICC プロファイルを MacOS X の ColorSyncユーティリティで見てみましょう。図の色付三角形は [BJ Color Printer Profile 2000] で、背後の白い三角形は sRGB のカラースペースです。この図から[BJ Color Printer Profile 2000] のカラースペースは sRGB 同等のため、sRGBの印刷には、 ICM や ColorSyncといったOSのカラーマネージメントを利用するのもお勧めです。
しかし、sRGBより広色域を持つAdobeRGB画像の印刷でICM/ColorSyncを利用すると、 [BJ Color Printer Profile 2000] のカラースペースに色を置換して印刷しますので、見栄えはおかしくありませんが、AdobeRGBの広色域を生かした印刷仕上がりにはなりません。


次に、[アプリケーションカラーマネージメント]で利用する純正インクジェット用紙のカラースペースを見てみましょう。図の色付三角形は「プロフェッショナルフォトペーパー」を品位優先で印刷した場合のカラースペースで、白い三角形はsRGBのカラースペースです。この図から、インクジェット用紙のICCプロファイルを利用する[アプリケーションカラーマネージメント]は、sRGBの印刷に適していることが分かります。また、sRGB色域より緑側が広い分、AdobeRGB画像の印刷にも適しています。


図 注釈:スーパーフォトペーパーのカラースペースもプロフェッショナルフォトペーパーとほとんど同じです。マットフォトペーパーは多少色域が狭くなりますが、つや消し感を生かした仕上がりですので、sRGBの印刷には十分です。

<メモ:sRGBとDTP>

sRGB は、DTP ( デスクトップパブリッシング ) などの商業印刷には向かないとも言われます。これは、DTPでは印刷を行う際に利用する CMYKカラースペースは sRGB より広い部分もあるため、「 sRGB で撮影やスキャンした画像を CMYK に変換する際に、 CMYK のカラースペースを十分に使えないのではないか?」という懸念からくるものです。このため、DTP業界ではCMYK よりカラースペースが広いAdobeRGB が主流となる動きがあります。


AdobeRGB

AdobeRGBはsRGBに比べ特に緑側の色域が広く、高い彩度まで表現可能なため、海の浅瀬や新緑などの瑞々しさを表現するのに最適です。高機能のデジタルカメラやスキャナ等が、AdobeRGBのカラースペースの画像データを書き出す事ができます。
また、AdobeRGBはDTP用のCMYKより広いカラースペースのため、AdobeRGBで撮影やスキャンした画像をCMYKに変換した際に「色のロスが無い」と言われることから、DTP業界の主流になりつつあります。
 AdobeRGBカラースペースの画像を印刷する場合は、sRGBを基準として動いている一般のソフトウエアでは仕上がりの色がくすんでしまいます。AdobeRGB画像の印刷には、AdobeRGBカラースペースを作業用スペースとして扱えるAdobe Photoshop等のソフトウエアを利用して印刷します。


キヤノン純正インクジェット用紙とAdobeRGBのカラースペースを比較してみましょう。図の色付三角形はCanon iP8600 PR1、白い三角形はAdobeRGBのカラースペースです。この図から、「プロフェッショナルフォトペーパー」*はAdobeRGB色域の大部分をカバーし、特に緑部分はそれ以上の表現が可能なカラースペースを持っていることが分かります。 *スーパーフォトペーパーも同様の広色域です。
このように、AdobeRGB画像の印刷には、インクジェット用紙のICCプロファイルを活かして印刷ができる、[アプリケーションカラーマネージメント]がお勧めです。


<メモ:AdobeRGBとモニタ表示>

AdobeRGBは、モニタ画面で再現できない色があると言われます。これは、一般のモニタ画面では、sRGB同等のカラースペースを表示するように作られているため、AdobeRGBの画像を見る際にsRGB以上のカラースペースを表示することができないのです。図の色付三角形はsRGBが表示可能なモニタ、白い三角形はAdobeRGBのカラースペースです。最近はAdobeRGBのカラースペースを表示可能なモニタが出てきていますが、まだ数十万円と高価なため専門業務等で使われている状況です。

このため、高機能デジタルカメラで撮影したAdobeRGB画像を一般のモニタで見ても、sRGBのカラースペースに置き換えて見ている事になります。これは同様に、AdobeRGB画像をプリントした場合、sRGBより広いカラースペースを持ったインクジェットプリンタの印刷仕上がりは、彩度の高い緑の部分等がモニタ画面表示より鮮やかに見える場合があるという事です。



<メモ:プリンタ機種や用紙のカラースペース比較>

同じ「プロフェッショナルフォトペーパー」を使って印刷する場合でも、プリンタの上位機種とエントリー機種では、印刷に利用しているインクの色数やインクの違いからカラースペースの領域が異なります。図は、色付三角形はエントリー機種、白い三角形は上位機種で、いずれもプロフェッショナルフォトペーパーを品位優先で印刷するプロファイルを比較しています。
いずれも、sRGBを超えるカラースペースを再現できる力があるのですが、インクの色数やインク自身の違いから、上位機種の方が広いカラースペースを持っています。


同様に、インクジェット用紙の違いでカラースペースも異なります。同じプリンタで印刷する場合でも、「プロフェッショナルフォトペーパー」と「マットフォトペーパー」では表現できるカラースペースが異なります。図は、色つきの部分がマットフォトペーパー、白い部分はプロフェッショナルフォトペーパーで、いずれも品位優先のプロファイルを比較しています。スーパーフォトペーパーは、プロフェッショナルフォトペーパーとほぼ同じカラースペースを持っています。
また、同じインクジェット用紙でも速度優先にすると、品位優先のプロファイルよりカラースペースが狭くなります。