Digital Photo Professionalを使ったRAW現像とプリント

− Digital Photo ProfessionalでRAWデータを美しくプリント −

EOS DIGITALシリーズのデジタル一眼レフカメラと、PIXUSシリーズのプリンタを手にして、撮影とプリントを楽しんでいる方も多いと思います。EOS DIGITALシリーズの高画質、PIXUSシリーズの高い印刷品質は、誰もが認めるところでしょう。カメラまかせでシャッターを切り、プリンタまかせで出力するだけでも、すばらしい写真に仕上がります。ただし、これはあくまで最大公約数的なクオリティとなるように、調整された結果です。自分なりの表現を追いかけるユーザーの中には、もっと「色」にこだわったプリントを求める人も多いのではないでしょうか。
一般的に高品質指向で撮影する場合、デジタルカメラの設定の記録画質は「RAW」、現像パラメーターは色域の広い「Adobe RGB」に設定するのが定番です。 そこで、この画像データの色を引き出すためにEOS DIGITALシリーズに付属するRAW画像編集ソフトウェア「Digital Photo Professional」(以下、DPP)と、PIXUSシリーズに付属する「Easy-PhotoPrint」(以下、EPP)ソフトウェアを使って、カメラやプリンタのポテンシャルを最大限に引き出した高画質プリントするテクニックを紹介しましょう。

RAWデータの高品質さを活かす二つのプリント方法

Adobe RGB色空間を持った RAWデータを印刷する方法は二つあります。 一つは、「DPP」が持っているカラーマネージメント機能を利用して、読み込んだRAWデータのAdobe RGB色空間をPIXUS印刷用紙の色空間に変換し、PIXUSのプリンタドライバに送り込む『DPPのカラーマネージメントで印刷する方法』です。
もう一つは、「DPP」では印刷用紙のICCプロファイルは指定せずに、「DPP」から「EPP」に印刷データを渡して印刷する『DPPとEPPが連携した印刷方法』です。 今回は、これらの方法を使う設定をそれぞれ解説していきます。

印刷するプリンタはA3ノビ対応モデル「PIXUS iP9910」(以下、iP9910)を利用し、印刷用紙は「プロフェッショナルフォトペーパー」を使って進めていきましょう。これらの組み合わせは、Adobe RGB空間の色も再現できる性能を持っています。



RAW編集ソフトDigital Photo Professionalは、カラーマネージメント機能も備えているところが高画質プリントを可能にしている



簡単印刷ソフトEasy-PhotPrintは、PIXUSプリンタドライバと自動的に連携して印刷している


1. DPPのカラーマネージメントで印刷する方法

DPPは、画質劣化のないRAWデータを直接印刷することができ、Adobe RGB色空間も扱えます。また、DPPのカラーマッチング設定で「プロフェッショナルフォトペーパー」のICCプロファイルを選ぶことによって、Adobe Photoshop同様にアプリケーション(DPP)側で印刷までのカラーマネージメントを行えるため、Adobe RGB色空間の広い色域を再現できるハイクオリティな印刷結果が得られるのです。
この方法では、DPP側でカラーマネージメントを完結するため、PIXUSプリンタドライバ側では、マッチング方法(カラーマネージメント)は「しない」を選んで印刷します。
では、この方法を行うための設定を見ていきましょう。

・DPPのカラーマネージメント設定

DPPでは、カラーマネージメント機能をAdobe RGB色空間のRAWデータを読み込み、印刷するプリンタや用紙に合わせたカラーマネージメントを行うように設定していきます。設定画面は、DPPの [ツール] メニュー>[環境設定]を開き、さらに「カラーマネージメント」タブに切り替えて表示する画面で行います。



DPPのカラーマネージメントを設定


(1)作業用色空間の初期設定
作業用色空間とは、DPPが画像データを扱うときの色空間です。カメラの現像パラメーターがAdobe RGB色空間で撮影したRAWデータを扱うため、ここは「Adobe RGB」に設定します。現像パラメーターがAdobe RGB以外で撮影されたデータを読み込むときは、作業用色空間は「sRGB」に設定します。Adobe RGBのデータをsRGB作業用色空間で扱うと、色がくすんでしまうので設定には注意しましょう。
この作業用色空間の初期設定を変更したときは、DPPを一旦終了して、再度DPPを起動した時から変更した設定が有効になりますので、必ず再起動しましょう。

現像パラメーターが異なる複数の画像をまとめてDPPに読み込んだときには、作業用色空間の初期設定を変更しなくても、画像毎に作業用色空間を設定できます。DPPの画像一覧で各画像を選択したら、[調整] メニュー>[作業用色空間]から、その画像の作業用色空間を設定してください。 この方法では、DPPの再起動も不要です。

(2)カラーマッチング設定
カラーマッチング設定とは、DPPに読み込んだ画像を画面表示や印刷出力する時に、入力データの色をそれぞれの出力デバイスに合わせた色にDPPのカラーマネージメント機能が変換する設定です。「印刷用プロファイル」と「マッチング方法」は、必ず設定しなければいけません。
印刷用プロファイルは、初期値では「なし」(プリンタドライバで色作り)になっていますが、これをDPPで印刷用紙に合わせた色作りを行うよう「プロフェッショナルフォトペーパー」のICCプロファイルを指定するように変更します。
ICCプロファイルとは、画像データと印刷結果の「色」を合わせるための色変換情報を記録したファイルです。印刷結果の発色は、プリンタ、用紙、印刷品位の設定などで変わるため、それぞれに対応したICCプロファイルが用意されています。

今回は「Canon iP9910 PR1」というICCプロファイルを選びます。このICCプロファイルに対応するプリンタはiP9910、用紙は「プロフェッショナルフォトペーパー」(PR)で、ドライバの印刷品位設定は「品位 1」(最高品位)というものです。
iP9910用プロフォトペーパーのICCプロファイルには、品位の低い「Canon iP9910 PR2」(品位 2)や「Canon iP9910 PR3」(品位 3)もありますが、品位が低くなると再現できる色域も狭くなるため、Adobe RGBのRAWデータをハイクオリティで印刷するためには「Canon iP9910 PR1」プロファイルを使います。

念のために補足しておくと、ICCプロファイルで定められたものと異なるプリンタや用紙を使ったり、印刷品位の設定を間違えると、正しい色変換が行われない印刷結果になってしまいますので注意しましょう。
iP9910のICCプロファイルには、この他スパーフォトペーパー(SP)用、マットフォトペーパ(MP)、ファインアートペーパー・フォトラグ(FA)用があり、PIXUSシリーズのプリンタドライバをインストールすると、用紙と印刷品質に応じたICCプロファイルも同時に組み込まれます。

もう一つ必要な設定の「マッチング方法」には、「知覚的」と「相対的」がありますが、ここでは「知覚的」を選びます。
知覚的は色のバランスを重視した発色になり、相対的は「色の値」を重視した出力となります。一般的には、知覚的は写真のような自然画像に適しており、肌色や空色などの中間色を微細に表現します。このため、デジタルカメラの画像を印刷するには知覚的がよいとされています。一方、相対的は、一般的にグラフィック系の画像に適しており、赤、青、黄の原色を鮮やかに表現します。

ちなみに、「表示用」でモニタプロファイルを指定しておくと、画像の色とモニタ画面の色、印刷の色までをカラーマッチングできるようになります。お使いのモニタにメーカ提供のICCプロファイルが付いている場合は、それを指定すると良いでしょう。
モニタプロファイルが無い場合は、モニタキャリブレータでモニタの発色をきちんと調整したうえで、モニタプロファイルを作成しないと効果は望めません。モニタプロファイルが無い場合は、sRGBを指定しておけば良いでしょう。
また、商業印刷の色味を試し見るための「CMYKシミュレーション用プロファイル」は、[なし]の設定で進めます。

・PIXUSプリンタドライバの設定

DPPでカラーマネージメントの設定を行ったら、印刷する画像を選択して、DPPの[ファイル] メニュー>[印刷]を選び、PIXUSプリンタドライバ設定を行って印刷します。
このプリンタドライバ設定がとても重要です。というのも、プリンタドライバの初期設定では、印刷の「色」はプリンタドライバが管理するようになっています。しかし、DPPのカラーマネージメントを利用して印刷する場合は、プリンタドライバの色管理を無効化しないと、せっかくDPP側で調整済みの印刷の色味に、再度プリンタドライバで色味付けしてしまうというカラーマネージメントの二重掛けが起こってしまいます。
この点に特に注意して、PIXUSプリンタドライバの設定を解説します。



「印刷」ダイアログからiP9910の プロパティを開く



「印刷品質」はカスタムで、「色調整」はマニュアルで行う

(1)用紙の種類
用紙の種類は、DPPのカラーマネージメント設定で指定したICCプロファイルの用紙に合わせます。今回は「Canon iP9910 PR1」というICCプロファイルを選んでいますので、用紙の種類は「プロフォトペーパー」(プロフェッショナルフォトペーパー)を選択します。

(2)印刷品質
印刷品質も、DPPのカラーマネージメント設定で指定したICCプロファイルの品質に合わせます。「Canon iP9910 PR1」プロファイルの印刷品質は「品位1」なので、「カスタム」を選択して「設定」ボタンを押して表示する「カスタム設定」画面から、品位のスライダを最高品位(きれい)の「1」に設定します。



ドライバの品位をICCプロファイルの末尾の数値と合わせる

(3)色調整
色調整がもっとも大切です。「マニュアル調整」を選択して「設定」ボタンをクリックして現れる「マニュアル色調整」ウィンドウから、「マッチング方法」を必ず「しない」に設定します。このように設定することで、DPPでカラーマネージメントが済んでいるデータにプリンタドライバでの色作りを加えない「二重掛けを防いだ」印刷が可能になります。
それ以外のカラーバランスや濃度は触らずに、ICMもチェックを外した初期設定のままでOKです。



DPPでカラーマネージメントが済んでいるので、「マッチング方法」を「しない」に設定

設定が終わったら印刷してみましょう。
フチなし印刷で仕上げたい場合は、あらかじめDPPの [ツール]メニュー>[トリミングトリミングツールを起動] を選び、「縦横比」メニューから用紙に合った比率を設定して、画像上をドラッグして印刷するエリアを用紙に合わせます。 プリンタドライバ側では、ページ設定タブから「フチなし全面印刷」にチェックを付けて印刷します。



DPPでフチなし印刷するには、トリミングツールを使い、画像を用紙の縦横比に合わせておく



次にプリンタドライバの「フチなし全面印刷」にチェックする

2. DPPとEPPが連携した印刷方法

次に、「DPPとEPPが連携した印刷方法」の設定を解説します。この印刷方法では、DPPでカラーマネージメントを行わず、Easy-PhotoPrintを使ってカラーマネージメントを行います。全体的に発色が鮮やかになり、メリハリのきいた出力結果となるのが特徴です。
Easy-PhotoPrintは単独ではRAWデータを扱えませんが、DPPと連携することでRAWデータを印刷できるようになり、高品位な印刷が可能です。
また、EPPの機能を使って各種用紙サイズに簡単にフチなし印刷などのレイアウトができる事は非常に便利です。

・DPPのカラーマネージメント設定

DPPの [ツール]メニュー>[環境設定]>[カラーマネージメント]タブでEPP印刷用にカラーマネージメント設定を行います。
「作業用色空間」の設定は、前記したようAdobe RGBで撮影したRAWデータならAdobe RGBに設定します。設定したらDPPの再起動を忘れないようにしましょう。画像一覧から選択した画像毎に、[調整]メニュー>[作業用色空間] で作業用色空間を指定することも可能です。
また、「Easy-PhotoPrintで印刷するときのマッチング方法」を設定しなければなりませんが、元画像から色ぶれの少ない色再現を行うために「相対的」に設定します。



DPPのカラーマネージメント設定は、EPPで印刷用の設定を行います

EPPを使って印刷するためには、DPPで印刷する画像を選択し、DPPの[ファイル] メニュー>[Easy-PhotoPrintで印刷]を選択します。



画像を選んだら[Easy-PhotoPrintで印刷]を選択

すると、DPPで選択したRAW画像を読み込んだ状態で、Easy-PhotoPrintが起動します。



EPPにRAW画像が読み込まれた

次に、EPPの [ファイル]メニュー>[設定] から、高画質で印刷するように初期設定を変更します。EPPでは、印刷時にプリンタドライバ画面が表示されませんので、この設定が重要です。
先ず、「印刷/日付」タブの「印刷品位」を「画質優先」に切り替えます。これで印刷スピードは遅くなりますが、印刷品位を上げて印刷できます。



高画質を求めるなら、印刷品質は「画質優先」を選ぶ

「詳細」タブには、「自動画像補正処理を有効にする」の機能があり、Exif Printに対応した画像補正処理を行います。画像にExif情報がない場合には、デジタルカメラやスキャナ等で入力した写真の色合いを補正します。
今回は、チェックを外して、自動画像補正処理を無効化して印刷してみましょう。



EPPの設定画面では自動画像補整処理のON/OFFが選択できる

EPPの設定が終わったら、通常の操作どおり、用紙サイズと用紙の種類、フチなしやフチありといったレイアウトを選ぶだけで印刷設定が終わります。ここでは、プロフェッショナルフォトペーパーに印刷するため、用紙の種類は「プロフォトペーパー」を選びます。EPPで選択した用紙の種類と同じ用紙をプリンタにセットしたら最後に、EPPの印刷ボタンで印刷します。



用紙やレイアウトを選択して印刷

それぞれの方法で印刷した結果を比較してみる

それでは、DPPでカラーマネージメント出力したときの印刷結果と、Easy-PhotoPrintから印刷したときの結果を比較してみましょう。

●印刷例(人物)

・DPPのカラーマネージメント印刷
元画像より明度が少し低くなったため、髪の毛の階調は沈んだ部分がありますが、元画像とほぼ同じ印象です。Easy-PhotoPrint出力とくらべて、肌色がリアルに再現され、モデルの柔らかい雰囲気が伝わってきます。
・DPPとEPP連携で印刷
元画像に比べコントラストがやや高くなり、色鮮やかでメリハリのある出力になっています。顔の立体感が強調され、肌色の彩度がアップしたことにより、モデルでの表情も生き生きと見えます。

●印刷例(風景)

・DPPのカラーマネージメント印刷
元画像に近い色が再現できています。芝生の諧調も自然で滑らかに表現されています。
・DPPとEPP連携で印刷
芝生のグリーンや空のブルーが記憶色に基づいた鮮やかな色になっています。

DPPのカラーマネージメントで印刷した結果では、明度やコントラストの補正はほとんど感じられず、元画像そのままの雰囲気の出力になります。発色も自然で、特に中間調に深みが増して、とても味わいのある発色となります。もちろん、明部と暗部の微妙な階調もうまく表現できています。元画像のクオリティを引き出し、撮影時の意図をより忠実に再現したい場合は、DPPカラーマネージメント出力がおすすめだといえます。

一方、DPPとEPPが連携した印刷した結果の発色も、今回は元画像を再現するように自動画像補正処理を外しているため、DPPのカラーマネージメントで印刷した結果とほぼ同様に仕上がっています。 しかし、メリハリのある鮮やかな色再現と記憶色をベースとした自動画像補正処理に好ましさを感じる人も多いと思いますので、お好みで自動画像補正処理を有効にしてみても良いでしょう。

仕上がりの好みや利便性に応じて両者を使い分ける。そんなことができるのも、キヤノンのデジタルカメラとキヤノンのプリンタを所有するユーザーならではの楽しみ方です。ぜひ試してみてください。


[記事:林 利明 Toshiaki Hayashi]