写真はプリントしてカタチにする --- 大浦 タケシ

− フィルムからデジタル、そしてホームプリントで変わったこと −

一眼からコンパクト、携帯電話に至るまで、数々の最新デジタルカメラのレビューや使いこなし、作例を写真雑誌やWebで発表している大浦氏。日々大量のデジタルフォト撮影をこなす大浦氏が語るのは、データのことではなく、意外にも"プリント"の大切さだった。むしろデジタル化で変わったことは、ベテラン、ビギナーに関わらず、プリントによって写真本来の楽しみ方の原点に戻ったことだと言う。
手軽に高品質な写真を撮ることが可能になったコンパクトデジタルカメラ、それを自宅で美しく出力することのできるインクジェットプリンタの進化・・・それらを簡単に手にすることができるのだから、もっと写真をプリントとしてカタチにしてほしい。そして写真の力をもっと感じてほしいと力説する。

デジタルフォトで何が変わったか

フィルムからデジタルへと写真を取り巻く環境が大きく変わった。フィルムレスによって画像は目に見えない信号となり、ビューアの代わりにパソコンの画面で撮った画像を見るようになった。気を付けなければならない点も、フィルムにキズや指紋を付けることではなく、うっかりデータを上書きしたり消去してしまうことに変わった。意外と置き場所に困るフィルム用ファイルは、 スマートでコンパクトなDVD用のフォルダとなった。
しかし何より変わったことを実感させてくれるのは、記念写真程度のものでも、自宅で簡単にクオリティの高いプリントとして出力できることかも知れない。それにはデジタル一眼レフに迫る描写性能を持つコンパクトデジタルカメラの登場とインクジェットプリンタの進化によるものが大きいと思う。


コンパクトデジタルカメラは魔法の箱

コンパクトデジタルカメラは35ミリフィルムのフォーマットにくらべはるかに小さな受光素子を採用している。たしかに大きなボケこそレンズの焦点距離の関係からコンパクトデジタルカメラでは得られにくいところはあるものの、大きなフォーマットと小さなボディのためにギリギリまで詰めた光学設計を行うフィルム用のレンズに比べ、無理なく諸収差を抑えたレンズが搭載できるからだ。よく受光素子が小さいとダイナミックレンジが狭く階調再現性が劣ったりノイズの発生が顕著になるといわれるが、例えそれを差し引いても得られる画質は高いのである。

また、コンパクトデジタルカメラは撮影レンズでつくられた画像をスルー画として液晶モニタで見られるわけだが、その特長も大きく描写性能に影響している。テレコンバータやワイドコンバータといったアタッチメント装着による画角の変化にも対応可能で、マクロ撮影でも正確なアングルが決められる。ピントの確認も容易で、あたかも一眼レフのような、というより一眼レフとほとんど変わらないような使い方が可能だ。これは、フィルムのコンパクトカメラでは決してマネのできないことで、より質の高い写真を得ることができるのだ。
今や手を伸ばし液晶モニタを見ながらの撮影スタイルがすっかり定着したコンパクトデジタルカメラ。一見、小さくて頼りないけれど高品質な写真が手軽に撮れてしまう魔法の箱に思えてならない。


インクジェットプリンタが写真の楽しみ方を原点に戻す箱

そしてインクジェットプリンタである。画像がフィルムからデジタルデータとなって、もっとも変わったのがプリントのフローだろう。それまでラボやDPE店など人まかせにしていたものから、特別なスキルや高額な機材を購入しなくてもだれでも簡単に自宅でできるようになったのだから。プリントサイズにしても写真を趣味としないデジタルユーザでさえA4サイズまでならば手軽に楽しめてしまうし、家庭用のプリンタの中にはA3ノビサイズまでプリントできるものも珍しくない。しかも画質はかつてのものにくらべ飛躍的に向上。銀塩プリントと同じ豊かな階調と退色性、耐光性に優れたものとなっている。
以前は写真愛好者というとポジフィルム(スライドフィルム)の愛用者が多く、しかもそのままビューアで見て楽しむことが多かった。そして、プリントとはというと大半はカラーネガで撮影されるためか、展覧会や一部のコンテストなどを除きどちらかというと初心者向きと見なされる傾向が強いものであった。
だがデジタルではベテランもビギナーもプリントが基本。これは、写真本来の楽しみ方の原点に戻ったともいえる。たしかにデジタルはパソコンなどで見られるためプリントにこだわる必要はないという考え方もある。しかし、撮影者の意思の入ったプリントが写真の最終形態とするならば、インクジェットプリンタによるものこそもっとも相応しいといえるのだ。


写真はプリントでないといけない

先日、古い友人と会う機会があった。彼女は若くして二人の子どもを生み、女手ひとつで育ててきた苦労人だ。その彼女が写真はプリントでないといけないと話しくれた。その理由は、子どもたちの成長を記録した写真が数える程度しかなく、プリント(写真)の大切さを強く感じていること。そしてケータイも含めてデータだと保管の方法によっては消えたり見れなくなってしまう可能性もないわけではないが、プリントはいつまでもカタチとして残ってくれるからだという。彼女は写真に対してはまったくの素人だけど、プリントとなった写真の力を教えられるものであった。
撮った写真をモニタで見て楽しむのも悪くはない。しかし、簡単にプリントの得られるインクジェットプリンタが数多くリリースされているのだから、もっと写真をプリントとしてカタチにしてほしい。そして写真の力をもっと感じてほしいと思う。

この組み合わせでは、DPPがEasy-PhotoPrintと連携でき、RAWデータのままPIXUSでAdobe RGB色空間のプリントが可能なため、私も撮影したデータをすぐプリントしたい場合に便利に活用しています。今までのように、一旦TIFFやJPEGに現像する必要がないため、スピーディーな処理が可能になったのです。

最終的な仕上げ印刷では、DPPでTIFFに現像した画像をPhotoshopで最終調整を行い、PhotoshopからPIXUS付属のプロファイルを使ってプリントしています。
用紙はプロフェッショナルフォトペーパーを使っていますが、PIXUSプリンターと専用プロファイルは品質が高く、Photoshopのカラーマネージメント機能でプロファイルを設定するだけで、パソコンのディスプレイとほぼ同様なイメージに仕上がります。そのためテストプリントを繰り返すことはそれほどありません。これは作業にかかる時間やインク、用紙の節約にも繋がるのでとても助っています。
私は、まず気に入った作品はA4サイズにプリントして、さらにそこからセレクトした作品をA3ノビサイズで仕上げています。まさに「写真」と言える画質が得られるPIXUSプリンターは、私の作品づくりには欠かせません。



大浦 タケシ(おおうら たけし)

1965年、宮崎県都城市生まれ。
日本大学芸術学部写真学科卒業。二輪誌カメラマン、デザイン企画会社を経てフリーカメラマンとして独立。
カメラ誌を中心にハウツーからメカ記事、写真関連全般の取材、執筆を行うとともに、一般誌、商業印刷物等におけるプランニング、編集制作も手がける。またケータイカメラ(携帯電話)で撮影した写真の考察やメカについての記事も多い。プライベートでは故郷の人や風景を長年追い続けており、写真展として「盆地〜もうひとつの記憶」を06年3月開催した。カメラグランプリ選考委員